うがい(R18) |
「…………このまま出してもいいんすか?」 訊く先は自分の股間、 …に顔を張り付かせるひとつ年上の先輩だった。 「……………………」 青八木さんは黙ったまま何かを考えるように伏せた目で視線を彷徨わせる。 そうしながらも横向きに咥えたチンポに這わせる舌は止めないで居るが、気を取られている所為かその動きは単調になっていた。 尤も、正直言って巧いわけでも無い口淫では色々考えて口を動かされるより思考停止して機械的に一定のリズムで舐められている方がよかったりする……とかは言ったら怒るだろう。 流石に。 「……ん、」 少々間を置いてから、返事のようなものが返って来る。 頷くように動いた頭に連動して滑る唇の感触が気持ちよかった。 俺が部活の強化合宿から帰ると、青八木さんは丁度レースの直前だった。 明日、では無いが明後日に備えて調整をするべき人の尻を使うつもりは無かったが、いつもの癖で食事を与えて食費を与えられて、いつもの癖でくっついていたら――こうなった。 「は、っ…」 口を大きく開けて中のものを縦に咥え直す人の、裏筋をちろちろと舐める舌が陰から断続的に見え隠れする。 一応、これをすると言い出したのは青八木さんの方だった。 口を使われるのは初めてだったが、奉仕しているだけの筈なのに真っ赤で切なげにも見える顔を見ていると単なるサービスと言うだけでは無いのかも知れないと思えて来る。 「じゃ、そのまま先っぽ舐めてろよ」 「んう…、っん」 しかし、本当に巧くは無い。 巧かったら巧かったで色々と微妙な気分になるだろうが、これはなかなか無いだろうと思うような酷さだった。 迷いが在るのか動きが一貫してない上、何よりもその一貫しない動きの中で時々結構な勢いで当たって来る歯が恐い。 こっちも久々なのと、シチュエーションの力と視覚的な刺激で取り敢えず勃つ事は勃ったが、それから優に三十分。 このままでは二時間舐められてもいけそうに無かった。 口から抜けないよう多少配慮しながら、自分で自分のサオを根元から扱き出す。 …そうだ、大してテクニックが在るわけでも無い奴のフェラチオは押並べ実質手コキでいかせるようなものだろう。 手を全く使わないなんて相当自信が在るか、逆に何も知識が無いか――男の身でそれは無いかとも思うが、実際舐められた経験が無ければどうだろう。 ああでも、童貞では無いんだったか、この人。 まさか本当に舐める事自体が目的では……無いよな。 「ん、ッ……、ふぁ、」 「……あー、気持ちい。 そこ、」 自分で扱いてるのだから気持ちいいのは当然だが、+αでの舐められている事実と視覚効果は歯さえ当たらなければ抜群だ。 開いている方の手で青八木さんの髪を梳くとぴくりと反応しこちらを仰ぎ見る眼と視線が絡み合う。 「は…っ、ぁ、」 「出るかも、…ほんとに、出すっすよ」 規則的に扱き上げられる肉棒を開けた口に入れたまま気持ちいいと言われた箇所を舐め続ける素直さと並べて普段の使い心地を思い出すと、途端に腰が射精感で重くなる。 竿を伝う青八木さんから過剰分泌された唾液を指に絡めながら、ただ出す事だけを考えて腕を動かす。 「っく、」 「!!」 そうして、耳まで赤くなった顔を頭から押さえて、こぼさないように咥内に注ぎ込んでやった。 「……はーっ」 「ん……、ぐぅ……!」 今のは割と濃かったかも知れない。 固形に近いようなものが尿道を通った感覚に、ぶるりと身震いをする。 竿を扱く手も止めず中身を絞り出すようにしながら、頭を押さえる手には更に力を入れてやった。 暴力を受けた小動物のような声を出した人は、暫く固まった後、目的も無いような動きでわたわたと両手を空に動かしていた。 「…………」 「、ん……!」 放っておいたらどうなるのかが気になって、そのままの姿勢で更に固まって……固めてみる。 謎の手の動きはすぐに元気を無くして垂れて行き、最後にタップアウトするように俺の脹ら脛を力無く三回叩いた。 「……!」 「はい、お疲れっした」 頭を押さえていた手で、今度は頭を引き剥がす。 ちゅぷ、と良い音を立てて、青八木さんの唇はチンポから離れた。 最中は自覚してなかったが、亀頭には長時間刺激を受け続けた名残のゆるい痺れと感覚の鈍りが在った。 「……………………」 「……っと、」 項垂れて床に座り込んだままの青八木さん、その背中を取り敢えずで撫でてみた。 へたくそだへたくそだとは思ったが、何十分にも亘って奉仕に尽力してくれたのは事実だ。 こちらも何かするべきだろう、レースが終わった後は勿論、差し当たっては食い物か何か。 「えー、と、」 「…………、」 使い終わったものを適当に仕舞いながら、コンビニで飲み物でも買って来ようかとリクエストを訊く言葉を探している内に、青八木さんは俯いていた頭をゆっくりと上げた。 その表情はなんとも微妙なもので、困惑したような眉間に、座った目と、への字に引き結んだ口元から少なくとも機嫌が良くは無いと言う事が…………、 口? 「飲んだんすか?」 「…………」 ベッドに座る俺を仰ぎ見るよう上向きにした顔、その上唇には勢い余ってはみ出したような白い雫が残っていた。 口が、短く粘着質な音を立てて開く。 覗いた舌の上には、どろりと白濁した液体が溜まり込んでいるのが見えた。 「…………あぁ、うん…」 先ず思ったのは、量に関してだった。 こんなに出しただろうか、と。 だが、考えてみれば口の中に溜まっているのは単に俺が吐き出したものだけでは無く、青八木さん自身の唾液も混ざったものだろう。 あと、見せつけるように口を開けて静止するその状態は取り敢えずシャッターチャンスだな、とか。 「あ゙」 と、俺がどうでもいいような事に気を取られている間に青八木さんはあろうことかそのままの体勢、そのまんまの状態で発声しやがった。 ごぽ、と液体の中を通った空気が外に弾ける音が小規模な洞窟状になった口蓋にくぐもって鈍く聞こえる。 「そんなまま喋んなよ!? 吐いていいから口ん中なんとかしろ!!!」 顔に叩き付けるように渡した数枚のティッシュは、だが十数秒後に乾いたまま口から外された。 「……ん、」 「だ、いじょうぶなんすか」 「まぁ……、うん、ほら」 「…見せなくていいんで」 青八木さんはまだ眉間に困惑が残る微妙な表情をしながらも、空になった咥内を見せる為にまた口を開ける。 その口は無視しながら腕を取って引き上げて、そのまま道連れにベッドに倒れ込む。 「自分の精液でうがいする人、初めて見たよ」 「すまん、テンパった」 アンタのテンパりはなんか変だとか別に謝られる事じゃないとか、今後どう奔放な性生活を送ったところでやはりこんな機会に恵まれる事は稀だろうなとか…。 なんとなく言いたいような事は在ったが、寝っ転がると急に色んな事が億劫になってしまう。 寝返りを打つように横を向き、胸の上に載っていた身体は向き合ったまま左に落とす。 一拍置いてからもぞもぞと這い上がるように頭側に移動して来る身体を、ゆるく抱き留める。 「…!」 「舌出してみろよ」 「ぇ、」 「味みるだけだから」 寄って来たくせに顔を近付けると身構える人を説き伏せ――或いは押さえ付けて、その口の中に舌を這わせた。 そのものは殆ど飲まれていても残渣は在るのか、どこと無く生臭いにおいに…よくわからない鈍い苦味が喉に引っ掛かる。 「……ぅ、」 「まずくねェか?」 「…美味くて飲んでるとでも思ったのか」 確かにそれはそうだった、拗ねたように人の胸に顔を埋める人の後頭部を撫でさすると、甘く頭突きをされた。 「無理しなくていいのに」 「別に…」 頭突き終わり胸から離れた青八木さんが言う。 「……飲んで欲しそうだったからな」 「っは!? 誰が!!?」 「お前以外に誰が居るんだ、親か。 お前の」 「どんなモンスターペアレントだよ!?」 短い溜め息のような音で笑う顔や普段よりは心持ち饒舌な様子に、ここに来て初めて青八木さんの機嫌が良かった事に気付く。 「……寝てたら鼻にも回って来た気が」 「自分の精液を鼻から出す人は……、特に見たくは無ェな」 「だろうな」 機嫌が良いのは、きっと俺も同じだった。 「……うがい、してくる」 「ん、起き上がりついでにコンビニ行こうぜ」 「?」 2016/12/05(公開) |